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川村万梨阿 デビュー31周年記念BOX 『ΟΔΥΣΣΕΙΑ』

20140727

 注文していたCD。川村万梨阿 デビュー31周年記念BOX『ΟΔΥΣΣΕΙΑ』が手元に届く。
 
 購入した人すべてが真っ先に抱くであろう感想「でかっ!」。

 とはいえ、いまでは「バイナル」の呼び名のほうが通りがよくなったアナログレコードのアルバムと同じサイズだから、大きさそれ自体はそこまで特別なものではないのだが。数十年前ならいざ知らず、いまどき流通されているアナログレコードのジャケットは、絵はおろか文字も入っていない無味乾燥なものが殆どなので。これくらいのサイズのジャケットにアートワークが施されていると、実物を目にした時のインパクトは絶大。
 ジャケットのサイズとアートワークに関しておそらくは、川村万梨阿のパートナーでもある永野護の意向も働いているのではと推測するが、当人のほくそ笑みがジャケットから浮かび上がってきそう。

 まあ、そんなことは関係なしに。そして、懐古趣味に囚われたおっさんの世迷いごとであるのも承知で。
 「CD主流の時代において、小さいことが前提でデザインされるアートワークを認めるべきか否か」なんて真剣に論じられていたことすらも懐かしく感じる現在において。この物理的な大きさは、手にとってただ眺めているだけでも感に入るものが。
 
 勿論肝心の中身も。

 今回のベスト盤。発売元は日本コロムビアということで。先月25日の内容とは矛盾するものの、さすが日本コロムビアといえるものに。
 クレジットを確認すると、今作のマスタリングエンジニアは佐藤洋。同社のクラシック音楽やジャズアルバムのマスタリングにおいて、日本プロ音楽録音賞を幾度も受賞しているサウンドエンジニア、佐藤洋の手により、かつては他社から発売された音源も日本コロムビア社内でもう一度マスタリングし直されてあり。今作に収録されている楽曲を既に持っている方も、手元のCDと今作とを聞き比べてみると、単なる思い出の再生装置に終わらない、また新しい楽しみかたがあるかと。

小松未可子の『e′tuis』は、本当に音割れが酷いのか

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 先日ツイッターでつぶやいたように。

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 キングレコードから発売された、小松未可子のアルバム『e′tuis』の音の状態、音割れが酷いと発売当初話題になっていたらしく、本当にそうなのか自分でも確かめてみようと。
 それ以上に。ツイッターで知った、同アルバム製作に携わっている人物やスタジオの名前が興味深いものだったので、実際に聴いてみようと購入。

 最初に手持ちの、異なる性質のヘッドホンそれぞれで一聴したところ。ソニーのMDR-CD900STでは違和感を感じるところはなかったが、同じソニーのMDR-XB700にヘッドホン用アンプをつなげて最大音量で聴いていると、歌声の張っている部分等ところどころで微細な違和感。あくまでも注意して聴けば「そうかもしれない」と感じる程度の箇所がある。

 とはいえ、個人の印象からくるぼんやりとした感想をぐだぐだ並べ立てていても仕様がないので、実際の音情報を確認してみようと。編集ソフトを取り出し、アルバムの音源を取り込み可視化された音情報を見てみた。

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 上にあげた波形がアルバム収録曲「Sky Message」の可視化された音情報。一見すると音割れを起こしやすそうな形状ではあるが、この状態ではまだ判断できないので二段階にわけ拡大して見てみる。

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 一番上がイントロからアウトロまで楽曲全体を可視化したもので、その中の赤色に色分けした箇所「ひょっとして、この部分が音割れしているのかもしれない」と感じた箇所を拡大して下に表示する形で見てみる。
 拡大してみると部分によってはCD-DA、コンパクト・ディスク・デジタル・オーディオのフォーマット許容範囲に近いところまできている(この波形の頂点が、フォーマット許容範囲の限界地点にべったり張り付いたまま飽和している状態、クリッピングといわれる状態になると音割れを起こす原因となる)が、破綻はしていない。
 思慮深いリスナーによっては「波形の頂点が少しでも触れた時点で音割れなのだ」と感じるかもしれないが、おそらく大半のリスナーにとっては許容の範囲内。クリッピング寸前の状態でとどまり続けているので。
 こういった傾向の音を好まないリスナーもいるかもしれないが。だからといってミキシング、マスタリング作業にあたって注意を払われていない、エンジニアの怠慢がありありと見て取れる手抜き音源というわけではない。整音作業が施されている。

 ここから推測できるのは、音源それ自体の欠陥。製作者側に起因する問題よりも、リスナー側の環境によるもの。スピーカーやヘッドホン等出力機器それぞれが持っている個性というか味付けと音源との相性により、場合によっては違和感をおぼえる。あるいはMP3やAAC等の圧縮音源に変換する際の設定によって生じる問題なのでは。
 楽曲製作者やサウンドエンジニアに起因する問題、送り手に瑕疵があったというより、リスナーの方に起因する問題だったのでは。

 あるいはアルバムのミックスダウン、マスタリングを担当したエンジニアの「このアルバムを購入するリスナーの多くは、きっとこれこれこういった方向性の音を好み、そのためのリスニング環境を作っているに違いない」と想定して仕上げた音と、実際にアルバムを購入したリスナーの好みの音と、それを聴くために作った環境との齟齬から発生したものでは。
 そう自分なりの憶測をもって、今回の雑文を終わりにしようと思うが、以下追記として。

 『e′tuis』のクレジットを見ると、発売元こそキングレコード。かつては演歌やアニメソングの老舗として、今ではAKB48関連で有名なレコード会社。
 発売元こそキングレコードとクレジットされているものの、実際の製作にあたっているのはレコーディング、ミックスダウンをキング関口台スタジオ、ホワイトベース・スタジオ、2467スタジオ等々場所も、そしてエンジニアも多岐にわたり。
 そして、異なるスタジオやエンジニアによってレコーディング、ミックスダウンされた楽曲は。サイデラ・マスタリング・スタジオで森崎雅人の手によりマスタリング作業が施されていることが判り。

 自分を含めて、少しだけ物事に詳しい気持ちになっている半可通は。CDジャケットに表記されている会社名を見て「このレーベルの音はどれも海苔波形だからなあ」等としたり顔で、物事の道理が判っているかのように語りたがるものだが。
 そういった中途半端な知識からくる先入観と決め付けこそが、物事の判断を間違ったものにし。ひいてはこれから有りうる新しい素晴らしいものとの出会いを阻害するだけだと。
 改めて、自戒をこめて思った次第。