2007年にソニーから発売されたMDR-XB700。同社製ヘッドホンにおける新しいライン、EXTRA BASSシリーズ最初期のフラッグシップモデル「MDR-XB700」。
クラブ音楽のリスニングに特化したラインというプレスリリースと、発売時はかなり斬新だったスタイリングにひかれて購入し、実際に使用したところ重低音再生に特化した、とはいえけして低音しか聞こえないキワモノでもないところに。そしてなによりスタイリング。
同製品発売後には国内他社から追随して似たコンセプトのヘッドホンが多数発売されることとなる、ウォークマン以降のデザイン文法とは一線を画す重厚長大なイヤーパッドを基軸にしたスタイリングは発売から十年たっても、そして以前に記したように間の抜けた自損事故からいまだ片耳の聞こえが悪くヘッドホンで音楽を聴くことはほぼ無くなった今も魅力的で。
しかし、XB700の美点である巨大なイヤーパッドは経年にともない内張りの部分がこのような無残な状態になり。
存外気に入っていたので補修をして使えないかソニーのカスタマーセンターに問い合わせをしたところ。同製品のサポートは行っていないとのつれない返答。
ただし、XB700の同グレードにあたるモデルと交換、というかたちで原状回復に応じるとのこと。
少し考えたが、やはり同モデルに愛着といささかの未練があったので交換は断り、代わりにお金を払い改めてXB700の、その時点での同グレード相当。XB900を追加で購入した。
だがしかし、時が経つにつれXB700そのものへの思いがまし。
そうこうしているうち、同モデルに関する上に述べた、イヤーパッドの経年劣化に悩まされた好事家はそれなりにいたらしく、ソニー社外からレストア用のパーツが製造販売されていることを知り、さっそく自分も社外品のXB700交換用イヤーパッドを購入、セルフリペアに挑戦。
交換作業はそうとう難儀だったが、かつて述べたこともある機械式腕時計用にそろえていた精密ドライバー等の工具が役立ち。
まずはアームとヘッドホンユニットをつなぐネジを外し。
イヤーパッドの内側に隠されているハウジングとイヤーパッドをつなぐネジも外す。
パッド部分とハウジングの接続部になっている、リング形状の部品を取り外し。
事前に用意していたレストア用イヤーパッドに換装し、再びヘッドホンユニットに取りつけアームと接続する。
こうしてMDR-XB700のレストアと相成りました。
蛇足として同モデルをインターネットで調べていると、市場においてかなりの希少価値がつけられ、デッドストックの美品に関しては発売当時参考価格の実に三倍強のプライスタグがつけられている。
ソニーの同ライン、EXTRA BASSシリーズはモデルチェンジを重ねたが、それでもオリジナルのXB700を求める層は多いのかと。振り返れば自身も現行のフラッグシップモデルを新規購入したものXB700を手放す気にはなれず、セルフリペアに挑戦したのも。
若い時分は最新こそが最善であると、モデルチェンジを重ねれば重ねただけ全てのあらゆる要素が向上されてゆくとの観念を持ちがちだが、いやいやどうして。刷新されたぶんだけ良くなる要素は確かにあるのだろうが、引き換えて失う部分も少なくない。
そんなことも歳を経るごとスノッブ気味の受け売り薀蓄ではなく、実経験の積み重ねに基づいた焦点の定まった知識として分かってゆく。