今年作った年賀状

2013newyear

 年始に。お世話になった皆様から頂いた年賀状へのお返しとして、わずかながら、それでも精一杯の気持ちを込め。自作の年賀状を作り続けていまして。

 しかし結婚後は、なかなか思うように時間が作れず。元旦に届くようにどころか、一月を超え二月も半ばを過ぎた頃にようやく完成する、どうにも愍然な状態が続いていたのに加え。
 子供が出来てからは、それまでに輪をかけて思うように時間を作れなくなり。この年賀状にいたっては、一年も半ばを過ぎた頃、夏の気配も感じられる頃に、ようやっと完成する。もう、いったい何の為の年賀状なのか、作っている自分も訳が判らなくなって。

 しかし。しかしながら来年こそは。来年以降からこそは。
 一昨年から今年の前半が、半生において最も儘ならない状態だった。多忙なりの時間の捻出にも慣れてきた、育児にも慣れてきたこれからは、多少なりとも楽観的解決を期待できるのでは。

 そう思っています。思いたい。

 とかいって。来年の年賀状を、年賀状そのものの目的に則した状態にするには、今から作り始めなければいけないか。

『THE IDOLM@STER 765PRO ALLSTARS+ GRE@TEST BEST! -THE IDOLM@STER HISTORY- 』

20131014

 先日、ヤマト2199の劇伴音楽のことを取り上げた際、日本コロムビアのマスタリング技術について触れたので。関連して、本来ならば真っ先に言及すべきだった『THE IDOLM@STER』。同名のゲームならびにアニメーション作品で使用されたボーカル曲が収録されている、日本コロムビアから発売されたアルバムについて。

 楽曲の良さは勿論として、音が良い。本当に音が良い。
 同社の音作りに対する姿勢の素晴らしさは、既に長々と述べているものの。このアルバムの音に関しては、単に高水準というだけでなく。同社から発売された同シリーズの音源と比較すると音作りの方向性を、今作において微妙に、だがはっきりと変更している。常になにがしかの意思。こころざしをもって、音作りにおける最終的な調整作業。マスタリングを施しているのが判り。
 それは今作の最初を飾る、作品の表題曲でもある「THE IDOLM@STER(M@STER VERSION-REMIX-)」を。2008年に発売された『THE IDOLM@STER BEST ALBUM ~MASTER OF MASTER~』に収録されている同一曲と聞き比べてみれば明白。

 ここで「『THE IDOLM@STER 765PRO ALLSTARS+ GRE@TEST BEST! -THE IDOLM@STER HISTORY- 』以下『THE IDOLM@STER HISTORY』に省略。は『Blu-spec CD2』とかいう技術で作られているのだから、音質が変わって当然なのでは」と思われる方もいるかもしれないが。
 ソニーが策定した規格「Blu-spec CD」ならびに「Blu-spec CD2」は。工場で音楽CDをプレスするにあたっての。何も情報が書き込まれていないCDに、音情報を記録してゆく際の品質改善を目的とした技術で。おおまかにいえば。オーディオ用CDプレイヤーが、リアルタイムでCDに記録された情報を読み取りつつ、情報を音へとリアルタイムで変換する際の。読み取り誤差を出来るだけ少なくする事により、鑑賞する際の音質劣化防止を目的にした技術なので。
 たとえ「Blu-spec CD」や「Blu-spec CD2」であっても、MP3やFLACまたはWAV等の音源に変換した時点で、通常の製造工程で作られたCDとの音質上の差異は理論上無くなり。それでも違いを感じるとするなら、それはCDの品質からくるものではなく、ひとえに元々の音情報それ自体の音質の違いであることをふまえ、それぞれのアルバムに収録されている「THE IDOLM@STER」を聞き比べてみると。

 微細ではあるが、はっきりと。『THE IDOLM@STER BEST ALBUM ~MASTER OF MASTER~』に収録されているものに比べて、『THE IDOLM@STER HISTORY』に収録されているものは低音域を控えめに。かわりに中音域が今までのものと比べ、より明瞭に感じられる。『THE IDOLM@STER BEST ALBUM ~MASTER OF MASTER~』版が、クリームを惜しげなく使った洋菓子だとしたら。今回のものは甘味の抑えられた上品な和菓子のような印象を受ける。
 いちおう断りを入れておくが。どちらも良いものである事に変わりないが、それぞれには明確な違いがある。

 自分が音楽を聴くにあたって、普段は。『THE IDOLM@STER』の楽曲に限らず、アニメソングやクラブ音楽を含めた今時の流行音楽を鑑賞する際。手持ちのヘッドホンの中でも、ソニーのMDR-XB700を主に使用している。
 何故かというと、ソニー製のXBシリーズ、エクストラベース・シリーズというライン。名称の通り、同社のラインの中でも、とりわけ低音域をしっかり聞かせる事を主目的に作られたヘッドホン。開発者もXBシリーズ発表時のプレスリリースで「音場としてクラブのフロアを想定して開発した」と明言しているヘッドホン。クラブ音楽を含めた打ち込み主体の、ミックスダウンにいたるまで一貫してPC上で作られた今時の流行音楽を聴くのに一番合っている。一番気持ちよく聞こえる。そう判断して。
 開放型から密閉型まで。MDR-XB700より数倍以上高価なヘッドホンまで色々試した結果、それでもXB700が合っている。とどのつまりは自分が聴きたい音楽に合っている、好きな音楽が気持ちよく聞こえるヘッドホンこそが最良のヘッドホンなのだ。ブランドや価格、世評よりも、つまるところは自分自身にとってどうなのか。そう結論が出ていたのだが。

 こと『THE IDOLM@STER HISTORY』に収録されている「THE IDOLM@STER」と、今作のいくつかの収録曲はXB700よりも、ゼンハイザーのHD650。開放型ヘッドホンの定番といわれている一台。
 私感を述べるとHD650は。先日に取り上げたヤマト2199劇伴音楽のような、ダイナミックレンジを活かすべき楽曲に最適のヘッドホン。反面、クラブ音楽のような直情的な楽曲を聴くと、上品に聞こえすぎるきらいがある。決して、ありとあらゆる音楽のポテンシャルを120パーセント引き出す魔法の万能ヘッドホンではない。そう感じているHD650で鑑賞した方が、今作の「THE IDOLM@STER」に関しては心地よく聞こえた。
 おそらくは今回の音作りにあたって、エンジニアが定めた明確な方向性によるものであろうが、HD650と相性が良いアニメソング。日本コロムビアは。何気なく、ことさらにひけらかすでも無く、しかし凄い事を。高いこころざしを流行音楽の音作りに込めている。そう思った。

 とはいえ『THE IDOLM@STER HISTORY』が、瑕疵の存在しない完璧な作品だと強弁するつもりは無い。いくつかの楽曲に関してはHD650で聞くと、歌声にリバーブが効きすぎているように感じる。それでも同ジャンルの凡百の他楽曲に比べれば微々たるものなのだが、リバーブが不自然に感じる楽曲もあり、アルバム全ての要素が完璧である。ドナルド・フェイゲンの『Nightfly』や、イエスの『Close to the Edge』等と肩を並べるべき歴史的名盤だと美辞麗句を連ねるつもりは無い。

 しかし『THE IDOLM@STER 765PRO ALLSTARS+ GRE@TEST BEST! -THE IDOLM@STER HISTORY- 』における日本コロムビアの音作りは、敬意を払うべき仕事。明確な意識を持ったプロフェッショナルの仕事であるのは間違いなく。
 いちファンとして、好きなコンテンツをこれだけの水準で提供してくれる事に、ただただ感謝するばかり。